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2007.11.19.Mon
執着
彼女は強くて弱かった。
彼女は女子校の有名人だった。
そこらへんの男よりも格好いいと評判だった。
声も低くて、ラルクの歌を平気でそのままの音程で歌えるような人だった。
でもしょっちゅう体調をくずしてて、万全の状態のその声を聴いた人はとても少ない。
彼女は入学してから何人かの女の子に告白され、すべてを断っていた。
「私の中に男を求められても困る」というのが彼女の理由だった。

彼女は1年生の2学期の途中で放送部に入部した。
私もそこで彼女と仲良くなった。
彼女はバイトをしていて、部活に来られる日は限られていた。
でも帰る方向が途中まで一緒で、時々ふたりで帰った。

いろんな話をした。
「妹とは半分しか血が繋がってない」とあっけらかんと話す彼女を、私は確かに強いと思った。

奇妙だと思い始めたのはいつからだっただろうか。
部活が終わってから帰る時、お菓子を食べようということになった。
私は生クリームが入った甘いクレープだったけれど、彼女はソーセージの入ったボリュームのあるものだった。
彼女は笑って「これが今日の晩ご飯」と言った。

3年になる前に彼女は部活をやめた。
バイトを増やしたためだった。
彼女は「高校もやめるかもしれない」と言った。
お金が払えないかもしれない。

彼女は名前で呼ばれるのを嫌がった。
妹の父親にそう呼ばれていたからだと言っていた。
一時期だけでも彼女の父親でもあったはずなのに、彼女は必ず「妹の父親」と言った。

その後私は、彼女が同性愛者であることを聞いた。
「私の中に男を求められても困る」というのは、自分を女として見て欲しいと言うことだった。

私は彼女の不安定さに惹かれていた。
彼女の強さは彼女の弱さだった。
私にはないものだった。

私の知る事実はそう多くない。
今は連絡も取っていない。

憧れではなく、ましてや恋でもなかった。
一番最近の、執着の記憶である。
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